いい教訓をもらった箱根駅伝(1月2日、3日)

1)泥くさく粘る走り、2)4年生の踏ん張り、3)反骨心──早大が目指した駅伝を「完璧にこなした」日体大が昨年の19位から大浮上!30年ぶりの優勝を飾った。大学駅伝のお手本を示すような見事な勝利に対し、素直に「おめでとう」といいたい。上記3点を感じさせてくれなかった早大は(悔しいが)負けるべくして負けたといえるだろう。

往路のオーダーを見て、早大が往路優勝する確率はかなり高いと予想した。駒大が出遅れ、東洋大が3区に設楽悠太を起用してきた時点で(残り2区で逆転できる!)往路優勝はほぼ「いただいた」とも思った。それでも勝ちきれなかったことが今大会のすべてだった。早大には後ろからレースをして勝てるだけのチーム力がまだ備わっていないからだ。

「疾風に勁草を知る」という(そういえば、出雲のフェアウエルパーティーの舞台で山梨学院・上田誠仁監督がこの文字を墨書していた。下の写真)。各校の選手たちが強風に苦しむなか、日体大の選手だけが何事もなかったかのように箱根路を駆け抜け、まさに疾風が日体大選手個々の「強さ」を知らせてくれた大会だった。スピードだけでも勝てない、スタミナだけでも勝てない、ストレングス(強さ)がたいせつなことを選手たちは改めて教えられたのではないだろうか。これまで実績のなかった選手が何人も区間記録の上位に食い込んでいるが、こうした選手たちも強さを身につけていたにちがいない。
30年ぶりといえば、30回大会、60回大会(30年ぶり)に優勝している早大は30の倍数の回には必ず優勝することになっている(と、私が勝手に思っている)。来年は90回大会。優勝は約束されたようなものだ。
しかし、反省を忘れてはいけない。反省、反骨心は渡辺監督がこの2年掲げたスローガンの一部。しかし、結果は、4位と5位。来年に向けては大反省、超反骨心になってくるかもしれない?

そして、新4年生の結束! 大迫傑主将を中心に、今回出場した相原将仁、志方文典、田中鴻佑の経験を生かし、同時に、工藤晧平(スポ科・熊本工業、どうした工藤、早くはい上がれ)、関口直人(商・浦和高、年の終わりの流れをそのまま持続させよう)、神田一貴(商・須磨学園、苦しみは乗り越えた瞬間、バネになる)、岡野徹(文・星陵高、努力は必ず実るものだ)らの「死ぬ気」の「奮起」が絶対的に必要だろう。

さらに、今回は3S「スピード・スタミナ・ストレングス」ばかりでなく、2P「プレパレーション(準備)とピーキング」の重要性が浮き彫りにされた大会だったともいえる。

反骨は、日体大にできたのだ、早大にできないわけはない。もっともっと「走れ!早稲田魂」。

●1区(21.4キロ)
<区間順位>
1位 東洋大 田口雅也 1時間03分32秒
2位 明 大 文元 慧 1時間03分46秒
3位 法 大 西池和人 1時間03分47秒

17位 早 大 前田悠貴(スポ科4・小林高)1時間05分36秒

京急蒲田駅前を苦しげな表情で通過する前田(前は帝京大・田中健人:区間14位)。折り返しの10区もこの構図になるとは誰が予想しただろうか。

●2区(23.2キロ)
<通過順位>
1位 日 大 2時間14分00秒
2位 東洋大 1秒差(以下すべてトップとの差)
3位 日体大 54秒差

12位 早大 2分08秒差
<個人順位>
1位 ベンジャミン(日大)1時間08分46秒
2位 オムワンバ(山梨学院)1時間09分32秒
3位 設楽啓太(東洋大)1時間10分29秒
6位 平賀翔太(基幹理工4・佐久長聖)1時間11分02秒

思わぬ出遅れにも冷静に走った平賀は、まず14位まで(帝京大)を捉える(保土ヶ谷駅前)。

●3区(21.5キロ)
<通過順位>
1位 東洋大 3時間18分37秒
2位 駒 大 2分41秒差
3位 早 大 2分45秒差
<個人順位>
1位 設楽悠太(東洋大)1時間04分36秒
2位 大迫 傑(スポ科3・佐久長聖)1時間04分44秒
3位 中村匠吾(駒大)1時間05分55秒

区間賞を取れなかったのは悔しいだろうが、大迫は期待通りの走りで、一気に3位まで押し上げた。カメラを構えていたが、車が視界をさえぎり、撮れず。日体大が早大に2秒差でつづいていたものの、ここで、優勝争いは3校に絞られたかにみえたが、やはり駅伝は怖ろしい。

●4区(18.5キロ)
<通過順位>
1位 東洋大 4時間17分51秒
2位 明 大 1分49秒差
3位 早 大 2分07秒差
<個人順位>
1位 田中秀幸(順大)57分16秒
2位 早川昇平(帝京大)57分56秒
3位 黒山和嵩(法大)57分59秒
8位 佐々木寛文(スポ科4・佐久長聖)58秒36

国府津駅手前の上り坂を日体大・木村勇貴と競りながら上る佐々木。ここで突き離したかったが、佐々木を「風よけ」に使った木村のほうが動きはよかった。

●5区(23.4キロ)
<往路順位>
1位 日体大 5時間40分15秒
2位 早 大 5時間42分50秒
3位 東洋大 5時間42分54秒
<個人順位>
1位 服部翔太(日体大)1時間20分35秒
2位 関口頌悟(法大)1時間22分32秒
3位 山本修平(スポ科2・時習館)1時間22分52秒

大平台を通過する山本(宇都宮市・益子保夫氏提供)。前半突っ込まざるをえない展開だったのが、最後に響いた。

●6区(20.8キロ)
<通過順位>
1位 日体大  6時間39分48秒
2位 東洋大 2分22秒差
3位 明 大 3分08秒差
4位 早 大 3分19秒差
<個人順位>
1位 千葉健太(駒大)58秒15
2位 広瀬大貴(明大)58秒19
3位 千葉一慶(帝京大)59秒07

12位 相原将仁(3・早実)60分17秒

余裕をもって走っているように見えた相原も他校のスペシャリストと競うにはまだ力不足だった。

●7区(21.3キロ)
<通過順位>
1位 日体大 7時間44分41秒
2位 東洋大 2分51秒差
3位 明 大 3分16秒差
4位 早 大 4分51秒差
<個人順位>
1位 我那覇和真(神奈川大)1時間04分47秒
2位 高田翔二(日体大)1時間04分53秒
3位 有村優樹(明大)1時間05分01秒

11位 志方文典(スポ科3・西脇工業)1時間6分26秒

やはり完調ではなかった志方。こんな苦しそうな表情は初めて見た。

●8区(21.5キロ)
<通過順位>
1位 日体大 8時間51分44秒
2位 東洋大 3分12秒差
3位 明 大 3分51秒差
4位 早 大 5分37秒差
<個人順位>
1位 高橋宗司(青山学院)1時間06分46秒
2位 高柳祐也(日体大)1時間07分03秒
3位 猪狩大樹(帝京大)1時間07分11秒

14位 柳 利幸(スポ科1・早大本庄)1時間07分49秒

●9区(23.2キロ)
<通過順位>
1位 日体大 10時間02分10秒
2位 東洋大 3分48秒差
3位 駒 大 6分24秒差
4位 早 大 7分40秒差
<個人順位>
1位 上野 渉(駒大)1時間09分50秒
2位 矢野圭吾(日体大)1時間10分26秒
3位 服部勇馬(東洋大)1時間11分02秒

12位 田中鴻佑(法3・洛南高)1時間12分29秒

駒大・上野にかわされる田中。上野との力の差を見せつけられた。

●10区(23.1キロ)
<チーム順位>
1位 日体大 11時間13分26秒
2位 東洋大 4分54秒差
3位 駒 大 5分57秒差
4位 帝京大 8分13秒差
5位 早 大 8分13秒差
<個人順位>
1位 後藤田健介(駒大)1時間10分49秒
2位 谷永雄一(日体大)1時間11分16秒
3位 熊崎健人(帝京大)1時間11分22秒
4位 田口大貴(スポ科2・秋田高)1時間11分49秒

帝京大・熊崎に追いつかれるも抜かせずに八ツ山橋を通過、品川駅前に向かう田口(益子氏提供)

初の箱根で、区間4位は大健闘だ。帝京大・熊崎とのデッドヒートも見ごたえがあった。欲をいえば、帝京大にとって4位と5位は雲泥の差だろうが、早大にとっては4位も5位も関係ないうえ、田口は追いつかれたのだから、一度は先に仕掛ける勇気と積極性をもってほしかった(熊崎のほうに余裕があったのは確かだが、これも、いい経験)。

<復路順位>
1位 駒 大 5時間32分11秒
2位 日体大 5時間33分11秒
3位 帝京大 5時間35分12秒
4位 東洋大 5時間35分26秒
8位 早 大 5時間38分49秒

<総合成績>
1位 日体大 11時間13分26秒
2位 東洋大 11時間18分20秒
3位 駒 大 11時間19分23秒
4位 帝京大 11時間21分39秒
5位 早 大 11時間21分39秒

2013-01-04