第86回東京箱根間往復大学駅伝競走(1月2・3日)

群雄割拠といわれた大会も終わってみれば、東洋大の2連覇。スポーツ新聞には「柏原時代」の大文字が躍っていた。かつて、大相撲には「柏鵬時代」があり、柏戸・大鵬のガチンコ勝負は日本中を沸かせたものだ。早大から、「大砲」が出現しないと東洋の天下は、さらに2年つづくことになりそうだ。出でよ!巨人・大砲・目玉役。

今年、箱根のキーワードは「リベンジ」と「4年生」だろう。昨年、シード権を逸した駒大は、1区で出遅れ、昨年の二の舞かと思われた。しかし、宇賀地、深津、高林、藤山といった4年生の活躍で2位まで押し上げた。優勝には届かなかったが、屈辱からのリベンジは果たしたといえる。昨年、完走チーム中最下位の22位だった青山学院も屈辱からのリベンジ。ここでも米澤(2区5位)、荒井(3区7位)、市岡(7区5位)の4年生が躍進の原動力になった。米澤は昨年2区12位、荒井は1区21位だったから、個人的にもリベンジの思いは強かったはずだ。個人のリベンジといえば、昨年、8区から9区へのタスキをつなげることができなかった城西大・石田亮が7区区間2位の快走。チームも初のシード権を獲得した。

さて、昨年ちょっとした油断?やレースの綾で、優勝を逃した早大。最もリベンジに燃えていたチームは残念ながら7位に終わった。4年生の尾崎、加藤が2ケタ順位。神澤も8位。復活が期待された高原は出場すらできなかった。スーパーエースのいないチームは4年生が流れをつくれないと苦しくなる。幸い新4年生は、高野、中島、北爪、猪俣、湯浅、伊藤、山口、畠山と伸びシロの多い選手ばかり。「リベンジ」と「4年生」は、おそらく来期、早大のキーワードになるだろう。そのため、今年は2つのキーワードにあえてカギを掛けたと考えれば、7位は悲観するほどではない。お楽しみはこれからだ……といっておこう。ただ、竹澤の存在を考慮に入れても、総合タイムが昨年より10分あまり遅いというのは、明らかに調整ミスと力不足。反省はしっかり、練習はたっぷり!を忘れずに。

●区間個人記録<1区>21.4キロ
1位 北條 尚(明 大)1時間02分27秒
2位 矢澤 曜(早 大)1時間02分40秒
3位 五ヵ谷宏司(専大)1時間02分46秒

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学連選抜・森本(神大)、明大・北條とともに最初から速い流れを引っぱった矢澤。今年は、自信にあふれる走りで、昨年の記録を2分08秒上回った。「1区ではもったいないので、来年は他の区で勝負させたい」(渡辺監督)

<2区>23.2キロ
1位 ダニエル(日 大)1時間07分37秒
2位 村澤明伸(東海大)1時間08分08秒
3位 外丸和輝(東農大)1時間08分38秒
3位 宇賀地強(駒 大)1時間08分38秒
12位 尾崎貴宏(早大)1時間10分13秒(チーム順位8位)

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保土ヶ谷駅前(11.5キロ)を通過する尾崎。ここですでに苦しい走りになっていた。「今年は1年を通し、集中して走り込むことができなかった」とは、尾崎の反省の弁。安定感に定評のあったキャプテンが最後に「乗れなかった」。

<3区>21.5キロ
1位 野口拓也(日体大)1時間02分46秒
2位 コスマス(山梨学院)1時間03分04秒
3位 鎧坂哲哉(明  大)1時間03分08秒
4位 平賀翔太(早  大)1時間03分27秒(チーム順位3位)

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平賀は上尾ハーフにつづき、快走。チームを8位から3位に上げた。それでも、「後半伸び切れなかったから、少し不満が残る走りだった」と平賀の目指すところは高い。高校のチームメイトだった村澤、千葉健太の走りがすばらしかっただけに、ライバル意識がいわせた言葉かもしれない。それにしても頼もしい新人の登場だ。

<4区>18.5キロ
1位 安田 昌倫(明  大)55分57秒
2位 久保岡諭司(日体大)56分57秒
3位 橋本 隆光(城西大)56分58秒
11位 大串顕史(早 大)58分13秒(チーム順位6位)
(この区間、毎年のことだが、写真撮れず)

監督は4区に大串を抜擢。ファンにとっては意外だった。腹痛を起こし、苦いデビューとなったが、一般入試の選手が走ることによって、選手たちの競走意識は格段に強くなる。来シーズンにつなげていきたいものだ。
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<5区>23.4キロ
1位 柏原竜二(東洋大)1時間17分08秒(区間新)
2位 大谷康太(山梨学院)1時間21分16秒
3位 大石港与(中  大)1時間21分30秒
9位 八木勇樹(早  大)1時間23分34秒(チーム順位7位)

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3位でスタートした東農大・貝塚信洋を追い詰める柏原と八木(箱根湯本駅手前)。柏原が八木の動きを窺っているのがわかる。柏原は、この時点で、相手は八木、そして、早大であると認識していただろう。しかし、八木は湯本を過ぎると離されはじめ、貝塚にも及ばなかった。5区に予定していたはずの佐々木寛文がインフルエンザに罹り、急きょ5区に起用された八木は、山登りの準備不足だといえる。駅伝でなかなか結果を出せない八木だが、まだ2年ある。秘めた能力の大爆発を期待したい。

<6区>20.8キロ
1位 千葉健太(駒大)59秒44
2位 山下隆盛(中大)59秒48
3位 田口恭輔(山梨学院)1時間00分09秒
16位 加藤 創大(早 大)1時間02分13秒(チーム順位9位)

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加藤が、まさかの失速。後ろから迫る駒大・千葉とは1分以上アドバンテージがあったにもかかわらず、大平台で並ばれると、ついていけなかった。2年連続の失敗を後から考えれば、山下りは加藤一人に任せた!というチーム内「暗黙の了解」が、落とし穴になっていたのかもしれない。ここで、早大の優勝は「望みなし」となった。そして、加藤のリベンジもならなかった。「体調が上がらなくて、ある程度は悪いのを覚悟していたが、思っていた以上に体が動かなかった」(加藤)

<7区>21.3キロ
1位 田中貴章(東洋大)1時間04分56秒
2位 石田 亮(城西大)1時間05分27秒
3位 井上陽介(日 大)1時間05分47秒
6位 萩原 涼(早 大)1時間06分10秒(チーム順位9位)

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青学大・市岡とデッドヒートを繰り広げた萩原。初陣とは思えない落ち着いた走りで、早実の先輩・北爪につないだ。「最初から最後まで引っぱれたのは、夏場からノーミスで練習を積めた成果だ」(渡辺監督)。復路では、7区、8区の早実コンビだけが、監督の思惑どおりに走れたといえる。

<8区>21.5キロ
1位 木之下翔太(中央学院)1時間06分55秒
2位 千葉  優(東 洋 大)1時間06分56秒
3位 井上 翔太(駒   大)1時間07分05秒
6位 北爪 貴志(早   大)1時間07分39秒(チーム順位9位)

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後輩の走りに鼓舞された北爪も、しっかり自分の走りをして期待に応えた。区間記録はなんと、昨年東洋大に振り切られた中島とまったくの同タイム。ということは、優勝するためには、さらに努力を要するということだろう。「昨年、中島が遊行寺の坂で東洋にやられたので、スタミナがあり、上りに強い北爪を起用した。指示どおりのいい走りで、しっかり仕事をしてくれた」(渡辺監督)

<9区>23.2キロ
1位 高林祐介(駒 大)1時間10分19秒
2位 田中佳祐(城西大)1時間11分07秒
3位 河野健一(帝京大)1時間11分12秒
14位 中島賢士(早大)1時間12分44秒(チーム7位)

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加藤と同じくリベンジを誓っていた中島も課題を来期に持ち越した。「最初、自重しすぎて、そのままペースを上げられず、悔いが残る。1年間、故障をしないで来年こそは、しっかり走りたい」(中島)

<10区>23.1キロ
1位 福島弘将(上武大)1時間10分54秒
2位 辻  幸佑(中 大)1時間11分44秒
3位 藤山修一(駒 大)1時間11分45秒
8位 神澤陽一(早 大)1時間13分11秒(チーム順位7位)

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1、2年のときより楽に走っているように見えたが、記録は伸びなかった。「高校時代からめんどうを見てきた選手。授業で忙しい中、コツコツと練習をやってきた。力を出し切れなかったが、早大学院から、なかなか選手は出てこない。そういう意味では、よくやってくれた」(渡辺監督)。監督には、優勝テープは神澤に切らせたいという思いもあったようだ。

2010-01-05