第87回東京箱根間往復大学駅伝競走(1月2、3日)

 今年の4年生は、「弱い弱い」といわれつづけてきた。猪俣以外は、区間エントリーされないのではないかと思われた時期もあった。佐々木、志方の故障がなければ、北爪、中島は走れなかったかもしれない。
 しかし、優勝してみれば、第一の勝因は、間違いなく4年生の「ふんばり」だった。
 東洋大の2連覇を支えてきた4年生の千葉優、高見諒、大津翔吾、富永光のうち、今回走ったのは千葉と大津だけ。
 一方、早大は猪俣、高野、ふたりの初出場選手が役割を100%以上果たした。北爪は昨年も走った8区で、自らの記録を1分短縮した。3年間、結果を出せなかった中島は泥臭い走りで粘りきった。また、突然の区間変更で、9区から5区の山を上ることになった猪俣の沈着冷静な走りが高野快走の呼び水となり、優勝を一気に引き寄せたといえる。
 昨年の箱根駅伝後、優勝のキーワードは、「リベンジ」と「4年生」になると書いた。まさに、4年生のリベンジ精神が優勝を現実のものにしてくれたのだ。
 そして、後輩たちには、こんな財産までも残してくれた。
「4年生が凄い走りをされたおかげで優勝できたと思う。その姿を見て、来年、自分たちも負けずにがんばろうという気持ちが強くなった」(矢澤)。
 走った選手たちには失礼だが、第二の勝因は、監督の采配にある。
 区間エントリー直前に主力選手がふたりも使えないとわかったときの監督の心境は手に取るようにわかる(わけはない)。
 だが、災い転じて福となす。1区に予定していた矢澤をあえて3区に回し、超攻撃的な大迫を1区に配置した策は見事に当たった。2区以降の配置も含めて、スタッフ陣は、リスクマネジメントのお手本のような処理能力を発揮した(監督は、「相楽豊の頭脳が9.5割、私の頭脳は0.5割」と、コーチを立てていたが)。また、監督の期待に「平然と」応えた大迫の傑物ぶりも光った。
 区間賞はこの大迫のひとつだけ。4つの区間賞を取った東洋とは対照的だが、「つなぐ力」(勝ちたい思い)の差が21秒あったということだろう(見えない勝因はコレだ)。

 渡辺監督が「グランドスラムを狙う」と宣言したとき、「グランドスラムは4冠のことをいうのではないか」の声が少なからずあった。
 確かに、ゴルフやテニスではそうだ。野球でも満塁ホームランのことをいう。しかし、もともとslamには「総取り」の意味がある。それにgrandをつけ、「そう簡単には達成できない偉大なる完全制覇」という敬意を表した言葉になったのだから、監督が間違っていたわけではない。3冠の偉業を讃え、ここではあえて、早大初の「グランドスラム達成」といってみたい。

 監督は、来年に向けて「反省と反骨心」を口にした。これは、「もう一度、生まれ変わる」ことを意味しているはずだ。選手たちが、さらに進化した姿を見せたとき、再び「勝利の子ら」が誕生することになるだろう。

[個人記録](総合記録は「思い出の箱根駅伝」に)
<1区>大迫傑:1時間02分22秒(区間賞)

1キロ過ぎに抜け出した大迫。ついてきたのは日大・堂本のみ。1区起用の意図を十分理解して、恐れずに飛び出したのはさすがだ(品川駅前)。

<2区>平賀翔太:1時間07分50秒(区間4位)

監督からは「必殺仕事人」と呼ばれる平賀の堅実さは、花の2区でも変わらなかった(保土ヶ谷駅前)。

<3区>矢澤曜:1時間03分45秒(区間6位)

1区から急きょ3区に回った矢澤は本来の走りではなかったものの、いい流れはしっかり保った(平塚駅入口)。

<4区>前田悠貴:55分06秒(区間2位)

これまで2度の駅伝では、前半に突っ込み、終盤苦しくなるパターンだったが、今回は、「落ち着いて走れたので、満足している。でも、区間賞を取りたかった」(前田)。

◎5区は、追いつけないのがわかり、小田原駅から、前田を撮りに「激走」。猪俣を撮れなかったのは残念だ。

<5区>猪俣英希:1時間21分14秒(区間9位)

<6区>高野寛基:58分55秒(区間2位)

高野は、4年間の苦渋から解き放たれた矢となって箱根を下る。給水ポイントでの接触、さらに転倒、2度もアクシデントがありながら、不屈の闘争心は最後まで燃え続けた(大平台)。

<7区>三田裕介:1時間04分01秒(区間2位)

三田が大津からもらった40秒あまりの貯金が最後に生きた(国府津駅前)。

<8区>北爪貴志:1時間06分40秒(区間3位)

走れない可能性も強かった北爪は、「それでも十分に準備を整え、いつでも走れる状態にしていた」。その結果、昨年と同じ8区で、自己記録を1分短縮した(平塚駅入口)。

<9区>八木勇樹:1時間10分03秒(区間2位)

八木は8区から区間賞でつなぐ東洋大の追撃を振り切り、キャプテンにつないだ(保土ヶ谷駅前)。次期主将の笑顔は来年も見られるか。

<10区>中島賢士:1時間09分55秒

直近の上尾ハーフで、東洋大・山本憲二は63分26秒、中島64分05秒。勢いの差があるように思われた。しかし、地力では中島も負けていない。19秒しかつめさせずに逃げ切った(八ツ山橋下)。

 中島を品川で応援し、優勝を確認したあと、近くにあった高輪・東禅寺に2連覇祈願にいったところ、なんと、こんな張り紙が!

これで、7冠に王手!1月9日、ラグビー蹴球部に、最後の1冠が託された。

7冠馬・シンボリルドルフも早大空前の7冠を心待ち!(2010年11月27日)

2011-01-05